奄美大島 Amamioshima
奄美大島は、鹿児島県本土から南に380kmほど、琉球弧の一角をなす周囲461kmの大きな島で、7万余りの人口を擁しています。
文化圏的にはもはや琉球に属するところではありますが、属国とはいえ一応独立王国であった琉球とは異なり、江戸時代の初めに私の故郷である薩摩藩が制圧し、ずっと直接の支配下に置いてきました。そして「黒糖地獄」と呼ばれたような過酷な砂糖の専売制を敷き、それによって上がった収益が、幕末の薩摩藩の歴史に残る大活躍を支える資金となったのです。こうしてみると、ここは近代日本の成立の踏み台となった島であるような気がします。現在ではもちろん、南海の楽園的なリゾート地にもなっており、鹿児島をはじめとする日本本土から数多くの観光客が訪れます。
亜熱帯の植生を持ち、天然記念物・アマミノクロウサギやルリカケスに代表されるような固有種の動物も多い島なのですが、私が「奄美大島」と聞いて真っ先に思い出すものは、何といっても猛烈な毒を持ったヘビ「ハブ」です。
もう亡くなりましたが、鹿児島には椋鳩十という有名な児童動物文学の郷土作家がおり、この人の著作の1つに『ハブとたたかう島』というものがありました。小学生の時分にこれを読んだ私は、本の中で語られている若夫婦と赤ちゃんの1家3人が1匹のハブのために全滅した話、ハブ取り名人が片足を失った話などを読んで、子供心に恐怖におののいた記憶があります。
聞けば、奄美大島におけるハブは、もともと生息していたわけではなく、人間の歴史とともに、沖縄方面から持ち込まれて繁殖したものなのだそうです。この地に住む人の生命を奪い続けたおぞましい毒蛇ではありますが、近年は咬害も少なくなっており、またハブがいるからこそ、アマミノクロウサギのような独特の動物たちの生息域が、天下の土建国家による乱開発から守られてきたという側面もあるようです。
奄美大島の南方には、請島・与路島という2つの小さな島がありますが、この2島は奄美の中でも特にハブが多く出没するところだといいます。島の集落には、10メートルおきくらいに木の「ハブ棒」がたてかけられており、ハブが出たときには必ずこれでたたき殺すのだそうです。そういうことは知らずにこの2島まで南下していった私ですが、幸い、ハブには出くわさずにすみました。
ハブとは全く関係ありませんが、この地で味わえる有名な郷土料理として、「鶏飯(けいはん)」があります。チキンスープのお茶漬けと呼べるような、比較的シンプルで微妙な味わいのある料理です。私が初めて奄美を訪れた日の夕暮れ時、南部の漁師町・古仁屋の家の前の路上で、ネコたちにえさをやっていたおばあさんとその孫娘に出会って話をしましたが、私がせっかく奄美に来たのだから今夜はぜひ鶏飯を食べてみたいという話を振ったら、中学生の孫娘さんが、
「あたし、鶏飯大好き! 学校の給食で月に1度出るけれど、月に1度じゃなくて、週に1度出ればいいのに」
と言って、無邪気に目をきらきらさせていたのが印象的でした。
▼瀬戸内町公式サイト http://www.amami-setouchi.org/sub_menu_html/kankou/sub_index.html